定期報告を怠るとどうなる?〜罰則規定〜
定期報告を怠った場合については建築基準法により罰則規定が設けられています。
もし、調査及び検査の通知が送付されても定期報告をしない、又は虚偽の報告をした場合は、建築基準法の規定により「100万円以下の罰金」が科せられます。
定期報告を行わずにこの通知を無視し続けていると督促状・勧告状が送付されてきます。現状これらの通知を無視し続けて罰金の処分まで行われたというケースは、今のところよほど悪質な場合に限られているようです、が、これらの通知を無視し続けて、定期報告を怠っていた建物で火災や建物管理の不備による人災などが起きてしまったら責任は、その建物の所有者や管理者に科せられます。近年の判例では、執行猶予はつかずにいきなりの実刑判決となることが多くなっています。
>>>事件例
ここからが重要なのですが、このような罰則やリスクがあるから定期報告を行ってくださいというだけではありません。
建物やそれに付帯する設備は、経年により劣化します。もし定期調査・定期検査の報告も行わないような杜撰(ずさん)な管理をしていると、回避できる事故の危険も回避できなくなるだけでなく、建物そのものの寿命も縮めていってしまうのです。
鉄筋コンクリート建築物の耐用年数は60年程度といわれますが、この数値は建築物が適切な施工・適切なメンテナンスを実施した上で得られる年数が前提となっています。
立地条件、仕上げ、施工方法、周囲の環境等によって、個々に劣化の進行状況はさまざまですが、たとえば、地震の発生や経年劣化などからコンクリートにひびが発生して、そこから雨水が浸入しはじめると、コンクリートの「中性化」が進行して中の鉄筋が錆びて膨張し、コンクリートを破壊(爆裂)し急速に劣化が進行してしまいます。
そのまま放っておけば、雨漏りしたり、外壁崩落の危険、各設備の故障が発生して普通に建物を使用することすら難しくなってしまいます。
※建物の適切なコスト(建物の一生にかかるコスト)の目安は、建築費用が2〜3割、その他の費用(光熱費・保全費・修繕費・解体費など)が7〜8割です。例えば、建築費用5億円の建物の一生(60年)の維持コストは解体費用まで含めて20億円、年間の維持費用は800万円程度が目安となります。(実際には、築後30年〜40年程度でエレベーター設備の更新、給排水設備の更新などの大がかりなメンテナンスや、設備の陳腐化などを補う改修工事などが必要になってきますので、年数で均等割りするだけではありません。)
つまり、罰則がどうなどということではなく、建物利用者の安全確保の為にも定期報告制度を利用して自身が所有されている建物の状態を把握し、長寿命化に努めるといった姿勢の方が、結局は所有者・管理者様の利益につながるということだと思います。
定期報告を怠ったことが原因とされる事件
[参照]
(日経新聞記事→「防火扉管理の定期報告求めず 福岡市、診療所に」)
(日経新聞記事→「2000施設が定期報告怠る 病院・診療所の防火設備管理状況」)